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更新日:2016年2月1日
宇陀市立病院では、基本的人権、患者の権利、医の倫理に基づき、患者にとって最も望ましい医療を行う。医療を行う場合の倫理原則として以下を参照し、臨床倫理上の問題に対応する際の参考とする。
判断能力のある患者の決定は、家族の希望、医師の勧めに反していても尊重する。患者の意志決定能力が病気、薬剤によって損なわれている場合は、家族または法定代理人との緊密な話し合いに基づいて治療方針を決定する。
医師などの医療スタッフは、患者に対して持てる全ての情報を提供し、治療方針に対する患者の自由な選択を妨げない。
患者が自己決定できるように、医師は診断や治療法、予後の見通しについての正確な情報を提供する。誤解や誤った情報に基づいて、意志決定をさせてはならない。
守秘義務については、医療関係資格に係る根拠法及び個人情報保護法を遵守する。診療の過程で取得する患者・家族の健康・家族関係に関する情報(患者情報)は極めて秘密性の高いものであることから、患者情報が漏れることによる被害から患者を守る義務があり、同時に医師は患者から情報を守秘することを期待されている。しかし、守秘義務によって第三者に危害が及ぶ可能性が明らかな場合は、情報開示については患者とも充分に相談する必要性がある。
患者との約束はしっかりと守り、医療専門職としての信頼感を高め、医師・医療スタッフと患者・家族間の信頼関係の構築に努める。しかし、約束を守ることが他の倫理原則に抵触する場合があるときには充分に注意する。
医師は患者の人権を尊重し、優しい心で接するとともに、医療内容について患者に理解できる言葉で説明し、患者の利益のために積極的な行動をとる。医師による患者の最善の追求と患者の自己決定が対立する場合には、医師は専門家としての責任を持つ立場から患者の話をよく聞き、有効な治療に応じるよう説明に努める。
もし合意が得られなければ患者の自己決定を尊重はするが、救命の場合には医療者の判断が優先される場合がある。意志決定能力を欠く患者においては、患者の利益を守る立場で、家族・法定代理人と相談し決定する。
災害時等において同時に複数の患者への治療といった限られた医療資源を使用する場合に、割振りの際に競合することが想定されるが、医師は患者の医療上の必要度に応じて、医療資源を適切に配分・提供する。
未成年者であっても判断能力があると診断される限り患者の意志を尊重する。何歳から判断能力を有するかの統一見解はないが、民法では、15歳以上で遺言ができる、米国小児科ガイドラインでは15歳以上からインフォームドコンセントを得るべきとされている。その他の場合には、親権者から同意を得る必要がある。
患者に意識障害があったり、認知症などのため判断能力や意志能力を欠くために、患者の意志が確認できない場合は、家族など代理人から同意を得る必要がある。
相対的無輸血治療→できる限り無輸血治療に努力するが、「輸血以外に救命手段がない」事態に至った場合は輸血を行う治療。
絶対的無輸血治療→いかなる場合でも輸血を行わず、輸血により救命できる可能性があっても輸血を行わない治療。
考え方の基本は「十分な対話による意志決定」である。患者や家族・関係者と医療従事者が、相互の情報提供と対話の中で患者の医学的状況や社会的背景について理解し、両者間の信頼関係を構築しながら最善の治療方法を一緒に探り、輸血療法に対する意志決定を行うことが重要である。その中で、当院の輸血に対する方針は、あくまでも相対的無輸血治療であることを十分に説明し、患者・家族等に納得して同意が得られるよう努める。
基本は「生命の尊重」である。手術時の予期せぬ大量出血のみならず、出血性ショックを呈する救急搬送患者や入院中に病状が急変し輸血療法を必須とする患者など、分秒を争う緊急時においては、救命を第一と考えた輸血治療を選択する。すなわち、相対的無輸血治療を患者や家族に意志に関わりなく行うものとする。なお、詳細については院内「輸血拒否患者への対応」に従う。
CPR(心肺蘇生術)は、心肺停止に陥った患者に行われる救急処置であるが、がん等の終末期、老衰、救命の可能性が無いなどの場合、必ずしも有益とはいえない。心肺蘇生の有効性と予想される結果について患者や家族に十分に説明し、理解と合意を得ることを前提とする。その上で、以下の原則に則り判断すると共に指示する。
人生の最終段階を迎えた患者や家族と、医師をはじめとする医療従事者が、患者にとって最善の医療とケアを提供するため、以下の原則に則り、最後まで尊厳を尊重した人間の生き方に着目した医療を目指す。
医療及びケアについては、厚生労働省の「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」や全日本病院協会の「終末期医療の指針」を参考に行う。
基本的には患者の意志が優先されるべきものである。しかし、本当に患者及び家族が十分に正確に理解して熟考した上で、異なる意志決定をしたのかを問い直す必要がある。関連する医療チーム自らもチーム内において、専門家としての方針の合意を行うとともに、患者と家族の意向をくみ取って両者の考えを一致に至らせる可能性を相互のコミュニケーションを通して探るできである。
医療行為によって生ずる負担と利益の説明に努め、その上で、望まない医療行為を患者が拒否できる権利を認める。ただし、感染症法などに基づき、医療行為の拒否は制限される場合があることに注意する。
患者は、わかりやすい言葉や方法で、十分理解し納得できるまで医療に関する説明や情報の提供を受ける権利及び、提供された情報と医療従事者の説明をよく聞き理解した上で、自分の意志で検査や治療などの医療を受けるか受けないかを決める権利がある。
従って、患者と医療従事者が情報と責任を共有して意思決定を行い、共同して医療に取り組めるように、円滑なコミュニケーションとインフォームドコンセントを十分に配慮しなければならない。
インフォームドコンセントの実施にあたっては、「宇陀市立病院インフォームドコンセントガイドライン」に基づき行う。
セカンドオピニオンとは、診療を受けるにあたって、より良い決断をするために、主治医以外の専門的な知識を持った第三者(他の医療機関の専門医師等)に求める「意見」、または「意見を求める行為」で、複数の専門家の意見を聞くことで、より適した治療法を患者自身が選択できることを保障するものです。
院内コーディネーターに連絡がとれない場合は、日本臓器移植ネットワークドナー情報専門フリーダイヤル0120-22-0149に連絡し、今後の指示を仰ぐ。
身体拘束は身体的、精神的、社会的などの多くの弊害があり、人間としての尊厳を冒すだけでなく、QOLを根本から損なう危険性を有している。しかし、患者の安全を守るうえで、身体拘束の必要性がある場合は、緊急やむを得ない措置として、患者に説明し家族の同意を得たうえで拘束(四肢の抑制、車椅子の安全ベルト、抑制衣、ミトン型手袋等)することがある。
身体抑制の実施手順等については、当院「身体抑制マニュアル」により行う。
医療機関においては、虐待の可能性に気付く機会が多いことから、虐待の早期発見・早期対応に、医療機関の役割はきわめて重要です。虐待が疑われる場合は、虐待対応マニュアルにより対応を行う。
患者の個人情報の保護及び適切な取扱いについては、「宇陀市個人情報保護条例」の規定を遵守し、国の「医療・介護事業者における個人情報保護の適切な取扱いのためのガイドライン」に準じるとともに、「宇陀市立病院個人情報保護方針」及び「個人情報保護に関する対応マニュアル」により行う。
患者や患者情報を用いた臨床研究を行う場合は、文部科学省・厚生労働省のガイドライン「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づき、倫理人権委員会にて審議を行い、患者の人権と医の倫理に配慮するとともに、患者の権利やプライバシーの保護、個人情報の保護の観点から審議を行う。
上記で判断がつかない場合、あるいは特別な問題が生じた場合には、倫理人権委員会で検討するものとする。
平成18年8月作成
平成27年11月改訂
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